目次
ETH LONDON2023とは?
そもそもですが、ETH LONDONとはイーサリアムが主催しているイベントの1つです。過去には東京でETH TOKYOが開催されたりなど、世界各地で毎月イベントを開催しています。
イベント内容は主に、エンジニアが集まって短期間でプロダクトを作るハッカソンです。その他にはスポンサーの登壇やブロックチェーン業界の関係者が交流する機会が提供されています。
今回筆者はETH LONDONのハッカソンに参加してきました。賞は受賞できなかったですが、どのようなプロダクトが注目されているのか、またスポンサーの最近の動向などを聞いてきたので以下で解説します。
ETH LONDON2023に参加していたスポンサー
今回参加していたスポンサーは以下です。20近くのスポンサーがいましたがハッカソンの賞金を出していて当日会場のブースにいたスポンサーたちです。
- Google Cloud
- Trias
- API3
- flare
- Tezos
- Hyplerlane
- Linera
- Etherspot
- WORMHOLE
- Aztec
- rarimo
- gateway.fm
- Near
- Sablier
- ENVIO
- Euler
- Scaffold-ETH2
- incogni
それぞれのスポンサーが賞を出していましたが、合計すると500万円以上のプライズが出ていました。プライズを獲得するにはそのスポンサーのプロダクトを使うなど基準があるのですが、自分が交流したエンジニアに人気があったプライズは”Scaffold-ETH2”と”Google Cloud”、”API3”でした。
Scaffold-ETH2はsolidityとhardhatを扱いやすくしたフレームワークであるため、多くのDappsで導入が簡単なためです。筆者も使いましたが、Dapps開発に慣れている人なら簡単に使える上に、コントラクトのreadとwriteが簡単にできる関数が用意されていて短期間で作るハッカソンにはちょうど良い使い心地でした。
3日間の様子
ETH LONDONの会場は、ロンドンのビッグベン付近のホテルでした。1階と地下1階の2フロアが使えました。1階フロアでは3日間スポンサーが最近のプロダクトのアップデートやワークショップを開催していました。だいたい会場に来ていた人数は150名程度でした。結構少ない人数だと感じました。
地下1階は主にエンジニアがコードをずっと書いていて、3食提供されるスペースもありました。体感では20名くらいは地下1階で夜中までコーディングをしてそのまま雑魚寝していました。
参加者の分布
話を聞いていると、やはりロンドン付近からきている人が多めでした。ロンドンからの大学生・院生・博士が少数ですがいました。
多くのハッカソン参加者は社会人で、国外の方でも西欧からきている人が話した体感としては多く、筆者のようにチェコのような東欧から来ている人は見当たりませんでした。
また、ハッカソンに参加されていた方々は、自分が業務で使っている知識や研究の知識を応用してプロダクトを作っていてかなり専門性の高いプロダクトが見受けられました。
興味を惹かれたスポンサーの話
スポンサーが登壇していた中で筆者が面白いと感じた話を紹介します。
ハッカソンでの良いプロダクトの作り方の話
クリプト業界の冬の時代を経験して、ちゃんと使われるプロダクトを作るためにハッカソンでした方が良いことを紹介している話が興味深かったです。以下のリンクより詳細を見れます。
https://mirror.xyz/openux.eth/Z9CkF5Np4usTAt393Snq-fLN6BfZQkj-5_o6dy-XGoE
上記はハッカソンのプロダクトでいいものを作ることを解説していますが、登壇者は上記のメソッドがクリプト業界を生き抜くプロダクトにも適用できると説明していました。
内容をざっくりまとめると以下のことを行いましょうと書いています。
- 早い段階からユーザーからフィードバックをもらう
- ペルソナの課題とゴールを明確にする
- ハッカソンの場合は、コーヒーを奢るなどしてヒアリングする人を探す
- プレゼンでは、ヒアリングした人の写真を載せて説得力を持たせる
面白いなと感じたのは、短期間でのハッカソンの立ち回りについて書かれていた部分です。今回のETH LONDONのように3日間しか開発期間がない場合は時間が限られるので、どのように審査員にアピールするのか、どうやってヒアリングする人を探すのかは大切です。
ETH LONDONに参加してみても周りの参加者でうまくアピールしている人は、積極的にスポンサーに話しかけにいったりしている人がいました。本質的ではないかもしれませんが、そのような立ち回りをすることも非常にありだと思います。
スポンサーの新サービス
スポンサーの1つであるAztecが新しいアップデートについて言及していました。Aztecはゼロ知識を活用したL2プロトコルです。
そのAztecが、NoirJsという、ブラウザ内でZKを生成したいNoir開発者向けにライブラリのリリースを発表していました。https://aztec.network/blog/announcing-noirjs-noir-applications-in-your-browser/
ファイナリストに残ったプロダクト
筆者もハッカソンに参加しましたが、ファイナリストには残れませんでした。以下でファイナリストをまとめて紹介しますが、スポンサーの提供している技術を使って面白いアイデアや彼らなりに課題に感じていることを解決する方向で開発をしているチームが多い印象でした。
また、見せたい機能の開発に絞り、フロントなど重要でない部分はあえて非常に簡素にしていてファイナリストの開発のリソースの分配の仕方も勉強になりました。
なるべくgithubリンクを貼ったので、興味のある方は是非各サービスのコードをご覧ください。
Quamtum Oracle
分散型の量子計算サービスです。自分の量子計算のプログラムを量子デバイスに送り、その結果をオンチェーンで受け取るというフレームワークを開発していました。
話を聞いていたところ、このサービスの利点は2つあるとのことです。1つが、膨大な計算を最初からせずによくなること。そしてもう1つが将来的にサービスに参加してくれた人にトークンを報酬で与えるとのことです。
以下に短い動画が上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=Kzr6UKrNc2c
このサービスがGCPをはじめ多くの賞を総取りしており、かなり注目されていました。メンバーも量子計算の博士課程が2名おり、かなり専門的な内容になっていました。
https://github.com/Quantum-Oracles/
Save my granny
AAと生体認証を活用して、クリプトに慣れてないユーザーでもウォレットを使いやすいように考えられたサービスです。ちなみにサービス名の由来は、おばあちゃんでも自分の孫を助けることができるサービスという意味だそうです。
https://github.com/pripatelUK/savemegranny
使い方としては、まずユーザーがガーディアンと呼ばれる人たちのメールアドレスを入力します。ガーディアンとはユーザーが信頼する人です。デモではおばあちゃんをガーディアンとして、その孫がおばあちゃんのメールアドレスを入力するという設定で話が進みました。
次に、メールアドレスを入力された人たちはパスキーを自分のデバイスに登録します。するとパスフレーズがガーディアンとユーザーに送信されます。
もし、ユーザー(デモでは孫)がウォレットにアクセスできなくなった場合には、ユーザーのガーディアン全員がパスフレーズを貼り付けた上でパスキーを用いて生体認証を行うと、ユーザーが再度ウォレットにアクセスできるようになります。
AAを使うことでパスキー署名を組み込むことができるようにしたことで従来よりもいいUXを提供しているのが面白かったです。また生体認証を組み合わせることで想定される攻撃にも対応しており、ハッカソンの短期間なのに仕上がりがすごいと感心しました。
Loyalty platform
ブロックチェーン上での利益分配についてのサービスです。加盟店はロイヤリティプログラムを簡単に始めることができ、加盟店を利用するユーザー、消費者はそれらプログラムを通じて得たポイントなどを確認できるサービスです。
https://github.com/MIDAV0/loyalty-platform-eth-london
ブロックチェーンを活用して、中小企業が顧客継続率を高めることができるサービスとしてデモを行っていました。
Promelo
NFTレンティングに関するプロトコルでした。
Promeloが提供するプロトコルを利用することで、NFTプロジェクトはレンディングを簡単にできるようになり、担保付きでNFTを貸し出せます。
Lester
異なるチェーン間の支払いサービスです。wormholeを活用することで、チェーン間での資産の複雑なやり取りを可能にしています。
https://github.com/JustAnotherDevv/Lester-EthLondon-2023
Real time music change Exchange
会場でデモを見て一番かっこいいと思ったプロジェクトです。web3×AI(音声生成)×ラジオという組み合わせです。
https://github.com/anton-io/ethlondon-rtme
スマートコントラクトを通じてstringでメッセージをリスナーが書き込み、そのメッセージをラジオ上でgoogleの音声AIが読み上げるというものです。
Wallet-less web2 onboarding for web3 DAPPs
web3に慣れていない人向けに作成されたNFTマーケットプレイスです。
https://github.com/ninfa-io/eth_london_2023
AAを活用することで、ユーザーはウォレットを作成したりガス代を払うことなくNFTを売買できます。
Swap Guard
flare Networkを活用したDEXサービスです。
https://github.com/Markeljan/swapguard
Swap Guardでは、公平な価格取引を目的としています。その実現方法として、flare Networkのオラクルから得た情報と、流動性プール内の価格を比較して価格がマッチしたら取引を実行し、そうでなければRejectする仕組みを提供しています。
Aztec swap
L2上に資産がある場合、その資産をUniswapを使いスワップしてから、再度L2上にスワップした資産をdepositするサービスです。
https://github.com/london-hackers/AztecSwap
ETH LONDON2023の感想
技術的なトレンドとしては依然としてAccount Abstructionが注目を集めている印象でした。またAI技術との組み合わせやゼロ知識証明もハッカソンの話題に上がっており、開発者サイドとして参加した自分は非常に楽しめました。
今回ファイナリストに選ばれていたサービスを見ると、クリプトサービスを長年使ったからこそ得られたインサイトをもとにして、具体的な課題を解決するプロダクトが多いなと感じました。
今後ともブロックチェーンの情報のキャッチアップと開発をしっかりと進めていきたいと思わされた良いイベントでした。