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スタートアップ5月

NFTの世の中への急速な浸透により、ブロックチェーン業界にもやっと追い風が吹くようになりました。

しかし、ブロックチェーン企業への投資額やサービスの数をみても、世界と比べると日本は依然として遅れていることが多々あります。その理由として、ブロックチェーンの理解度が低いことやブロックチェーン業界に対する過度な規制強化も一つの要因と言えるでしょう。

このような現況を変えるためにも、注目を集めているブロックチェーンサービスを紹介・傾向を分析し、それを発信することにより多くの方にブロックチェーン企業を認知してもらい、業界全体がより良い方向へ向かうきっかけ作りを目的としています。

では、早速事例を紹介していきます。

Upshot

Upshotとは専門家の正直な意見に対してインセンティブを与えるサービスで、$7.5M(約8億円)の調達を達成しました。

NBATopShotから始まったNFTバブルにより、デジタルアートのNFTが急速に世の中に出回るようになりました。ですが、価値がわからないけど購入したり、高額で販売されたりなど、デジタルアートの客観的な価格形成における課題も浮き彫りになってきています。

そのようなデジタルアートの価格の不透明さを課題を解決するために、Upshotではデジタルアートをより多くの専門家に鑑定してもらい、価格を形成するプロトコルを開発しています。正直な回答にはインセンティブが与えられ、実績のある専門家の意見はより重要視されるようになっています。デジタルアートの鑑定は2択問題に答えるだけの簡単なUIになっています。

 

upshot-image

将来的には、価格予測とオンチェーンデータを組み合わせたUIの提供や、トークンの発行などで収益を上げることも考えられるそうです。

P2Pで価格を形成する仕組みはブロックチェーンらしく、他の分野でも応用が効きそうな事例でとても好感を持てました。

Upshot’s NFT Appraisal Protocol Nabs $7.5M From CoinFund, Framework

How to Appraise NFTs on Upshot

 

スタートバーン

スタートバーンはアートのためのブロックチェーン証明書サービスや、アート流通・評価のインフラとなる「Startrail」の構築している会社で、総額11.2億円の資金調達を実施しました。

今回の資金調達で下記3点の活動をより強化していく予定だそうです。

①アート作品の信頼性を守るためのブロックチェーン証明書「Cert.」の仕組み強化と国際的な普及を推進
②アートのためのブロックチェーンインフラ「Startrail」を応用して、次世代NFTのバックエンドシステムを提案
③ウェブメディア「Tokyo Art Beat」をアップデート

現在、アート作品の証明書は公式の登記所がなく管理のルールが定まっていません。そのため、証明書の偽造が行われたり、贋作が出回ったりして、アート業界として大きな課題となっています。そこで、アート作品の証明書の登記、管理の仕組みとしてブロックチェーンを活用したStartrailを開発しています。

証券保管振替機構のシステムがあるから、証券市場が成り立つように、アート市場の根幹を支えるシステムとしてStartrailの開発と普及を目指しているそうです。

アート業界全体で鑑みると、②の「Startrail」の普及が今後の鍵になると感じました。アート業界を根本から変革するポテンシャルのあるスタートバーンの今後の展開が楽しみです。

アートの価値をブロックチェーンで支えるスタートバーン、京大・東大関連VCなどから11.2億円を調達

 

Amonica Brands

Amimoca Brandsは、NFTのレースカーゲーム F1 Delta TimeやメタバースのThe Sandboxを運営する会社で、約$88M(96億)円の資金を調達しました。

F1 Delta Time内のCircuit de Monacoのトラックの5%の分割所有権を表すNFT「Formula 1 Grand Prix de Monaco 2020 1A」がオークションにて、375.56ETH(当時約2500万円)で落札され、あらゆるNFTの販売額の中で最高額(当時)を記録しました。そのほかにも数多くの実績を残しており、F1 Delta Timeはブロックチェーンゲーム業界において確固たる地位を築いています。

また、ブロックチェーンのメタバース領域では、Cryptovoxels、Decentraland、The Sandboxが三大巨塔としてよく挙げられますが、この中でもThe SandboxがWallet数で見ると他のメターバスサービスよりも一歩先を行ってると感じます。また、CoincheckがTheSandboxの土地を所有するなど企業が利用する事例も出てきています。

metaverse

ブロックチェーンでホットな領域である、ゲームとメタバースにおいてトップを走るAmimoca Brandsだからこそ、$88Mという大きな資金調達を達成できたのでしょう。

F1® Delta Time’s Formula 1 Grand Prix de Monaco 2020 NFT auctioned for ~US$223,000, setting new record

Data Research: Land Whales in the Metaverse

 

Zapper

DeFiダッシュボードアプリを運営しているZapperが$15M(約16億円)を調達しました。Zapperを利用することで、ウォレットの残高を簡単に確認でき、ステーキング、ファーミングやトークンのチェーン間スワップもできたりします。

Zapperを簡単に説明すると、既存のDeFiサービスを統合して使いやすくしただけのものです。DeFiがスマートコントラクトで動いてるからこそ、スマートコントラクトを実行するフロントの部分は誰でも構築&統合することができ、とてもブロックチェーンらしいサービスと感じています。

zapper

DeFi Dashboard Zapper Raises $15M to Build On-Platform App Store

 

Infinite Objects

Infinite Objectsはデジタルアートをディスプレイと一緒に販売する会社で、$6M(約6.6億円)の資金調達を実施しました。Infinite Objectsの特徴は、一つのディスプレイで一つのアートしか表示できないところです。たとえ、Infinite Objectsで買った他の作品でさえ表示することはできず、ディスプレイにシリアル番号やエディション番号が刻まれており、物理的なディスプレイと作品が密接に結びついています。

Infinite Objectsは、元々はNFTを活用せずサービスを運営していましたが、2020年12月にクリプトアーティストのBeeple氏と提携して、NFTの物理的なトークンを販売しています。そして、今回の資金調達にNBATopshotを運営するDappar Labsが投資家として参加することになりました。

ブロックチェーンにおいて、デジタルとリアルの紐付けはオラクル問題などの観点から難しいとされていますが、今回の資金調達により、Infinite Objectsが新しいデジタルとリアルの体験価値を想像することを期待します。

ただ1つのNFT動画を表示するディスプレイでデジタルアートの再構築を目指すInfinite Objects

 

Circle (USDC)

米ドルにペッグされたステーブルコイン「USDC」を発行するCircle社が$440M(約480億円)の資金調達を達成しました。Circle社はSPACへの上場を計画しているとのことで、直前のラウンドで資金調達したと考えられています。

BitcoinやEthereumに代表される暗号資産は価格の変動が激しく、現時点では従来の通貨のように使うのはまだ難しい状況です。そこで、価格変動を抑え法定通貨のように利用できるよう設計されてたものがステーブルコインです。

「GYEN」と呼ばれるGMOが発行する秘本園と連動したステーブルコイン(日本在住者向けには販売していません)がBinanceに上場されたり、Suicaと同じ仕組みの前払い支払い手段で発行される「JPYC」だったりと、日本でもステーブルコインの動きは活発になってきています。

日銀の黒田総裁も、ステーブルコインは「将来、便利な決済手段になり得る」と肯定的な意見を述べており、今後の暗号資産の発展に「ステーブルコイン」は欠かせない要素であると思います。

After $440 million fundraise, Circle is said to be considering a SPAC deal

日銀の黒田総裁もビットコインを疑問視「裏付け資産を持っていない」

おわりに

今回は2021年5月に資金調達をした会社を紹介しました。本記事では紹介できなかったのですが、他にも多くの会社が資金調達をしており、特にNFT関連の会社が目立ちました。NFTはまだまだ発展途上の分野であるので、これからも多くの企業から注目を集める領域だと感じています。

また、DeFi系のアプリも次々とローンチされておりますが、一昔前と比べるとUniswap、Compoundなど確固たる地位を築きつつあるDeFiサービスが目立つようになりました。このような情勢下では、本記事で紹介したZapperのように、サービスを一から作るのではなく、ブロックチェーンの特性を活かし、既存のアプリを組み合わせたサービスに注目が集まっています。

最後になりますが、BlockchainBizを運営するガイアックスでは、シード期からスタートアップを支援する活動を行なっています。サービスの相談や投資など、ご興味のある方はお気軽にご連絡ください。

Gaiaxでブロックチェーンの研究開発を担当。ブロックチェーン業界また開発者コミュニティの発展のため、ブロックチェーンを用いたアプリケーションを開発し、それらをオープンソースとして公開する。

スタートアップ

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