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『イーサリアム(Ethereum)』 デベロッパーカンファレンス in ロンドンレポート
  • 更新日: 2016年10月24日

2015年11月9-13日にイギリスのロンドンで開催された、新ブロックチェーンプラットフォームである、イーサリアムのデベロッパーカンファレンスに行って参りました。5日間、現地で見て感じてきたことを、レポートいたします。

話題となりつつあるブロックチェーン技術

最近、ビットコインをはじめとするブロックチェーン技術の話題を目にする機会が、増えてきました。銀行間送金への応用など、展開例の話題も出始めており、今後はより一段目にする機会が増えてくると思います。

そんなブロックチェーン技術ですが、実はビットコイン以外にも世界には何種類かのプラットフォームが存在し、今回はその1つであるイーサリアムというブロックチェーンプラットフォームの開発者会議「DEVCON1」がロンドンにて開催されましたので、そのレポートをお送りいたします。
まず、イーサリアムとは ビットコインが仮想通過の流通に特化したプラットフォームを提供しているのに対し、イーサリアムは契約や保証に関する取引を強化し、ビットコインより汎用的に使用できることを目指したブロックチェーン技術。

また、開発のしやすさも特徴で、開発者向けのツールが多数揃えられている上、今回はOSやクラウド側のサポートの発表もあり、プラットフォームとしての盛り上がりも見せております。

 

DEVCON1の雰囲気

会場は、ロンドンの金融街の近くに位置する、ギブソンホールで行われました。このホールは古いヨーロッパ建築で、高い天井や柱全てに渡り、素晴らしい建物でした。ここに、500席ほど椅子が並べられ、常に200人以上、多い時は満員に近い聴衆がヨーロッパのみならず北米・アジアなど世界中から集いました。運営者によると、11月9日から13日の5日間毎日400人が集まり、ライブ配信は延べ1万5千人が視聴したそうです。

会場の裏側では、ミネラルウォーター、コーヒー・紅茶は自由に飲め、朝はパン、昼はサンドイッチ、ティータイムにはクッキーも自由に食べることができ、ランチタイムや休憩時間には、多くの方々がブロックチェーン談義に花を咲かせていました。

devcon1

広がるアプリケーション

今回のDEVCON1では、イーサリアムの創始者であるVitalik Buterinによる内部の動作の説明から、開発者会議らしく、開発環境の説明、そして、ブロックチェーンを使ったサービスのプロトタイプの話、など多岐にわたった話がされました。

このイベントのスポンサーに名を連ね注目を集めたのはマイクロソフト社でした。イーサリアムの開発関連企業であるConsenSys社と協業し、クラウドコンピューティングプラットフォームであるAzure上に、イーサリアムを動かし、ConsenSys社の統合開発環境であるEther.campというアプリが起動するまで、わずか数クリックでできる環境の提供開始をアナウンスいたしました。また、OSのサポートしては、Ubuntuが、Azure、AWS(Aamazon Web Service)、GCP(Google Cloud Pratform)というトップのクラウドコンピューティング環境を網羅し、そしてIoTも サポートしていることをアピールし、幾つかのアプリケーションアイデアを発表していました。

また、複数の統合開発環境、ライブコーディング(プログラミングの実演)や、テスト環境まで、動き出したから2年も経っていないプラットフォームにもかかわらず、提供されている開発者をサポートするツールの多さが、イーサリアムが本気で広がりを見せようとする勢いを感じることができました。

 

ブロックチェーンがシェアリングエコノミーをけん引?

そんな中、大変印象的だったのが、アプリケーションのプロトタイプの多さです。IBM社による水道メーターをスマートメーターにしブロックチェーン上で管理する実験や、家庭間電力取引のプロトタイプをしているTransActive Grid Project、他にも、ビットコインでも注目されている少額決済(マイクロペイメント・ナノペイメント)、クラウドファンディング、マーケットプレイスWeiFund、銀行間取引など金融系のプロトタイプ、信用情報の置き換えや、チャットアプリWhisper、イベント管理アプリInflektなどもありました。中にはIoTを用いた実機デモもありました。家の鍵を管理するSlock.itというスマートロックサービスで、決済と権限管理をブロックチェーン上で行うというものです。権利とお金の関係を透明にすることを得意とするブロックチェーンがまさにシェアリングエコノミーの中心に構える形になっていました。

その中でも特に筆者の関心を引いたのは、ujo Musicという、音楽の権利金銭関係を透明にして、今の音楽産業にイノベーションを起こそうと言う、衝撃的なプロトタイプです。このアプリでは、ユーザーはブロックチェーン上でお金を払うことによりその楽曲を購入し、一方音楽版権者は代金を直接受け取る仕組みになっています。ここまでは、一見普通に見えるのですが、一般に音楽販売の場合、プロダクションや販売店、版権管理団体など、中間業者と呼ばれるものがたくさんあります。それらを経て、版権者にお金が行くのですが、それにはだいぶ長いタイムラグが有り、また不透明な取引もないとはいえません。しかし、このプロトタイプでは、版権者の演奏者や作曲家などへの分配率もブロックチェーン上に記録されており、購入と同時に関係者全員への即時分配されるようになっています。この仕組によって、作曲家や演奏家の作った楽曲に適正な価格を与えることができ、、あらゆるデジタルコンテンツのフェアなトレードを実現する好例といえるでしょう。

Ujo

 

イーサリアムからサービスが次々に生まれる

これだけ多くの開発ツールや、プロトタイプが多数発表されたDEVCON1ですが、今後はプロトタイプから、サービスへの移行が進んでくることが予想されます。
注目される分野は、お金と権利の管理を得意とするブロックチェーンの技術を利用して、いつからいつまで期間、あるものを使う権利を付与するといった形での、物や電気のシェアリングエコノミー、そしてコンテンツの権利管理、中間業者による搾取を防ぎ生産者と消費者を直接つなぐフェアなトレードといったものなど、その強みを発揮したアプリがどんどん出てくるのではないかと思われます。
このような、大きな変化の兆しを見せるブロックチェーン、私達の生活に大きな影響を与える可能性のあるテクノロジーとして、今後の展開から目が離せません。

Gaiax技術マネージャ。研究開発チーム「さきがけ」リーダー。新たな事業のシーズ探しを牽引。2015年11月『イーサリアム(Ethereum)』 デベロッパーカンファレンス in ロンドンに参加しブロックチェーンの持つ可能性に魅入られる。以降ブロックチェーン分野について集中的に取り組む。

Ethereumイベントレポート

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