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送金・受金を伴う多くの取引において、送り手と受け手の間には手数料が存在します。仮想通貨もその例外ではなく、送金時に手数料がかかります。しかし一般的な取引手数料の仕組みとは異なり、ブロックチェーンの仕組みに基づいた独特な仕組みになっています。今回は、その取引手数料の仕組みについて見ていきましょう。

なお、ブロックチェーンを使用した仮想通貨はいくつも存在しており、それぞれのブロックチェーンによって取引手数料の仕組みも異なりますので一概に説明することができません。そこで、今回はビットコインの場合に限定して紹介します。

 

取引手数料の概要

取引手数料とは、ビットコインの送金時にマイナーへ支払われる手数料です。ビットコインの中核技術であるプルーフ・オブ・ワーク(PoW)においては、マイニングという行為によって取引偽造が防がれています。

「プルーフ・オブ・ワーク」について、詳しくは以下の記事をご覧下さい。

分散ネットワークでの合意を可能にしたコンセンサスアルゴリズム「プルーフ・オブ・ワーク」

マイニングによって、ブロックチェーンに新たに追加されるブロックの生成に成功すると、ビットコインのルールで定められた額の報酬が、ビットコインとして支払われます。この報酬に取引手数料も含まれています。そして、この報酬の内訳は、以下のようになっています。

  1. 新たに発行(生成)されるビットコイン
  2. ユーザーが支払う取引手数料

この二つの合計がマイニングに成功したマイナーに支払われます。ビットコインでは時間が経つにつれて1.の新たに発行されるビットコインが減額される仕組みになっています。なので、それがやがて0に達してしまうと報酬がなくなってしまいます(詳しくは「2回目の半減期を迎える仮想通貨ビットコイン(bitcoin)」をご参照ください)。しかし報酬には新たに発行されるコイン以外にも2.の取引手数料が含まれているので、配布される報酬が0に達してもマイニングが成功したことによる報酬が0になることはありません。従って、取引手数料は取引(トランザクション)を次のブロックに含める行為(マイニング)に対するインセンティブとして働き続けます。

また、基本的には少額でも手数料をトランザクションに含めなければならないため、取引手数料はスパムトランザクションやビットコインシステムの悪用に対する抑止力としても機能します。

 

取引承認の優先度を決める

手数料には、もう一つ機能があります。それは、手数料を多く払うことにより、取引を早く確定させるよう指示できるというものです。

手数料を高くすれば、マイナーが得られる報酬が大きくなります。よって、マイナーからみると報酬をより多くもらえる取引を優先して処理したほうが収入をより多く得ることができます。よって、マイナーは手数料の高い取引から承認していきます。従って、手数料を高く設定するほど取引が処理される優先順位が上がり、早く承認されやすくなります。

現在、ビットコインの取引確認の優先度は単純に手数料の高さによって決定されていますが、以前は、priority(プライオリティー)というパラメータも考慮されており、priorityはコインの古さ(最後に使用されたときからの未使用期間)やコインの量によって決まっており、古いコインほど・残高が多いほど早く確認されやすいという面もありました。しかし、このpriorityは現在では実質的にほとんど使われていないようです。

 

どのように取引手数料は決まるのか

この手数料の金額はどのようにして決まっているのでしょうか。

まず押さえておくこととして、送金者は手数料を自由に決めることができ、その手数料の金額によって承認までの時間が決まります。一方マイニングを行うマイナー側は様々な要因を考慮・計算することで、どの取引を優先して取り込むかを決めます。最近のWalletアプリなどは送金者に代わってこれらの要因を考慮した送金手数料を自動的に計算してくれます。また、手数料の設定はアプリケーションによって違うので、手数料が固定となっているアプリケーションも存在しています。

それでは、どのような要因が手数料に影響するのでしょうか説明していきましょう。

その一つの例として、ビットコインの取引が渋滞すると手数料が上がるといったものがあります。キプロス・ショックやチャイナ・ショックといった、法定通貨の先行きが不安になるという危機が近年起こっていますが、こういった危機が起こったときに、ビットコインを始めとする仮想通貨の需要が高まります。これは、自分の資産を守るため、信用の低下した法定通貨や株式市場からの退避先として、ビットコインなどの仮想通貨が使われるからです。仮想通貨への需要が高まる(通貨が人気になる)と取引量が一時的に増えることになります。取引量が増えると、取引が渋滞しその分承認時間は長くなります。しかし送金者はより早く既存の資金をビットコインに変えたいと思っているので、手数料を上げることで承認時間を早くすることになります。

また時間とともにビットコインユーザーは増え続けており、現在はトランザクションが多すぎるほどになっています。よって、手数料が無料のトランザクションをわざわざブロックに入れてくれるマイナーがいなくなってきており、平均手数料は年々上がってきています。以前は可能とされていた手数料無料の取引は2016年には実際にほとんどない状態になっているようです。現状、データサイズが1KB以下、0.01BTC以上の送金など、いくつかの条件を満たすと手数料無料で送金することもできますが、通常の取引では、最低0.0001BTCが必要となります。

 

画像:Trade Block|Historical Date

 

その他の要因として、トランザクションの「データサイズ」に基づいてもマイナーは手数料を計算しています。従って、10BTCでも1BTCでも送金金額が変わっても、データの大きさが変わらなければ取引データの通信コストは変わりません。よって、ビットコインの送金額は手数料に関係ありません。

反対にトランザクションデータ自体が複雑になってデータサイズが大きくなると、手数料が高くなる傾向にあります。これはトランザクションデータの送金元や送金先データが複数ある場合にトランザクションが複雑になったことにより、データサイズが大きくなり、手数料が上がることがあります。

このように様々な要因が手数料に影響しています。現在の手数料がどの程度か気になる人は、以下のような手数料予測サイトがあるので参考にすると良いでしょう。

PREDICTING BITCOIN FEES FOR TRANSACTIONS.

 

 

取引手数料はトランザクション処理やマイニングへのインセンティブなど、様々な効果を持つパラメーターであることが分かります。この取引手数料の動向を見ることで、ブロックチェーンの状態を確認することもできます。そう言った観点から取引手数料に注目してみると、またひとつブロックチェーンが面白くなるかもしれません。

Gaiax技術マネージャ。研究開発チーム「さきがけ」リーダー。新たな事業のシーズ探しを牽引。2015年11月『イーサリアム(Ethereum)』 デベロッパーカンファレンス in ロンドンに参加しブロックチェーンの持つ可能性に魅入られる。以降ブロックチェーン分野について集中的に取り組む。

ビットコインブロックチェーン取引手数料用語集

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