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ユーザーがコンテンツを投稿したり、投票したりすることで報酬を得られるブロックチェーンを使ったソーシャルメディアプラットフォームSteemとそのアプリケーションSteemitについて紹介します。

 

ブロックチェーンを使ったソーシャルメディアSteemit

Steemit, Inc.はNed Scott氏とBitSharesを開発したDaniel Larimer氏が2016年に創業したアメリカ・ニューヨークに本拠地をおくスタートアップで、社名と同名のサービスSteemitは、同社のソーシャルメディアプラットフォームSteemを利用したブログサービスのようなソーシャルメディアです。

従来の中央集権的なソーシャルメディアやSNSではユーザーが自身の投稿したコンテンツから直接見返りを得る術がなかったのに対し、Steemitのユーザーは他のユーザーから評価される質のよい記事を投稿したり、読む価値のある記事に投票したりすることで、Steemitコミュニティーに貢献したとして報酬を得ることができます。現在は落ちついていますが、2016年7月にSteemitで最初の支払いがはじまると新しいシステムへの期待感もありSteemの仮想通貨STEEMの価格が急騰しました。

新仮想通貨「スチーム」が急騰、過去2週間で1000%超 | ロイター(2016年7月13日付)

実際にSteemitをのぞいてみましょう。シンプルなブログサービスといったスタイルで、仮想通貨、創作小説、ライフハック、アート、写真、食などさまざまなトピックの記事が投稿されています。

Steemit(画像: Steemitトップページより)

Steemitが注目を集め始めた当初は新規ユーザー登録が制限されたこともありましたが、現在はスムーズにアカウントを作成し、ブログサービスのようなエディタから記事を投稿することができます。

Steemitの記事投稿画面

ただ、写真を直接投稿できないなど使い勝手が独特で、さらに投稿から一定期間経過した記事の編集・削除ができません。ブロックチェーンを利用したシステムであること、報酬は読者が記事を読んだ時点の投票をもとに確定することを考えるとこのような仕様も想像に難くはありませんが、利用に際して注意が必要といえます。

 

Steemブロックチェーン

Steemitは、コミュニティー構築とソーシャルインタラクションを仮想通貨STEEMによる報酬システムで実現するブロックチェーンベースの分散型ネットワークSteemを利用したアプリケーションです。

Steemブロックチェーンには、ユーザーのアカウント情報、仮想通貨Steemの取引履歴とともにユーザーによって作成されたコンテンツおよびそのメタデータといった情報がトランザクションとして保存されています。

Steemブロックチェーンの合意形成は権限委譲型のProof of Stakeで、ユーザーは合意形成を行うwitnessと呼ばれるユーザーを投票によって選びます。投票ではSteemネットワーク内での個々のユーザーの影響力を表すSteem Powerと呼ばれる値が考慮されます。ラウンド毎に21のwitnessが選ばれトランザクションの検証、ブロックの作成に携わります。SteemitのwitnessのリストはSteemit上で公開されていて、ユーザーはリスト上のwitnessに投票したり、新しくwitnessを推薦したりすることもできます。このように事前にwitnessを選ぶことで3秒毎のブロック作成を可能にし、さらにSteemの創業者のひとりLarimer氏が開発に携わったBitSharesのGrapheneを利用することで、Steemのネットワークは秒間10,000トランザクションを処理できるといいます。

Steemブロックチェーンの技術的な詳細、データ構造についてはホワイトペーパーとAPIリファレンスが参考になります。

 

通貨を使ったビジネスモデル

Steemネットワークには、基軸通貨STEEMのほかに、Steem Power(SP)、Steem Dollars(SBD)という資産が存在します。それぞれの概要は次の通りです。

  • STEEM: Steemネットワークの仮想通貨。取引所などで売買され、ユーザー間での取引が可能。
  • Steem Power: コンテンツの作成やコンテンツへの投票により得られる資産。Steemのネットワーク内での影響力や報酬配分の際の指標。13週間かけてSTEEMとのみ交換可能。ユーザーが長期的に保有することを想定した資産。利子がつく。
  • Steem Dollars: コンテンツの作成により得られる資産。3.5日でSTEEMと交換可能、3.5日間のSTEEMの価格の中央値を用いて1SBD≒1USDで換算。ユーザーが短期的に保有することを想定した資産。利子がつく。取引所での売買も可能。

Steem/Steemit内の通貨システム(画像: Steemのホワイトペーパーを元に作成)

Steem PowerとSteem Dollarについて少し詳しく違いを見てみましょう。ユーザーはコンテンツ作成時にSteem PowerとSteem Dollarで受け取る報酬の割合を設定することができます。デフォルトの「Steem PowerとSteem Dollar半々で受け取る」のほか、「すべてをSteem Powerで受け取る」「報酬をまったく受け取らない」という選択肢があります。より真剣にコミュニティーに貢献したい、投機目的でSteemを利用したいというユーザーにとっては、コミュニティーと密接であるが他通貨への換金へのハードルが比較的高い流動性の低い資産(Steem Power)を報酬として多く得るのか、Steemネットワークや取引所を通じてSTEEMやBitcoinへの換金が比較的用意な流動性の高い資産(Steem Dollar)をとるのかという選択と見ることもできます。

Steemネットワーク内のSTEEMの総量の上限は決まっておらず、Steemitを例にとると、日々一定量の通貨が新規発行されユーザーへの報酬支払いのために蓄積されているといいます。この75%がコンテンツを作成したユーザーや、コミュニティーのためになるコンテンツを支持したユーザーへの報酬として、15%がSteem Powerを保有しているユーザーへコミュニティーサポートの返礼として、残りの10%がブロックチェーンを運用するwitnessへの報酬として配分されます。通貨発行によるインフレが心配されますが、Steemは2016年12月以降インフレ率を9.5%から毎年約0.5%ずつ0.95%まで下がるようにコントロールしながら通貨の新規発行を行っていくとしています。

Steemに関する統計を扱うsteemd.comによると、2017年9月現在、2億5600万STEEMが発行され、そのうち1億8300万STEEMがSteem Powerとして存在しています。2017年年初に公開されたSteemitのロードマップでは、Steem Powerの41%はSteemit, Inc.が所有していて、分散化を進めるためにも徐々にこれを手放していくとしています。

Steemはプロジェクトの開始当初にICOを行わず、また外部からの資金調達に関する報道もありません。ビジネスプランについて明らかにしていませんが、現在保有するSteem Powerのキャピタルゲインにより収益化をはかるといった方向性が考えられます。STEEMの値上がりはSteem Powerのキャピタルゲインに大きく影響するため、Steemitをメディアとしてまた投資先として魅了的なものとする努力を欠かせないでしょう。

Steemネットワークの理念や通貨システムについて、Steemitのホワイトペーパーに詳しい記述があります。

Steem – An incentivized, blockchain-based, public content platform.(2017年8月付)

 

今後の展望

ソーシャルメディアプラットフォームSteemit、Steemブロックチェーン、そして企業としてのSteemitの今後の計画を示したロードマップが2017年年初に公開されています。短期的な四半期毎の技術的な改善案、iOSやAndroid向アプリなどの新規リリース計画のほか、数年をかけて企業として保持する大量のSteem Powerを解放し権力の分散化を進める計画などが記されています。

Steemit 2017 Roadmap

Steemitでは独自の経済圏をデザインしようとする中、通貨システムが少し煩雑になっている感は否めません。また、コンテンツを作成して多くの報酬を得るのは難しいかもしれません。ただ、Steemitで記事を投稿して円に換算してたった数円でも報酬が支払われると、本当の意味でのユーザーが作るソーシャルなメディアを垣間みたようで、新しい時代と新しいシステムに期待したくなります。

Steemitから着想を得たという日本発のブロックチェーンベースのソーシャルメディアALISのICOが2017年9月1日から始まり、目標最小額11,666ETH(1ETH30000円として約3億5000万円)を達成し注目を集めています。

Steemitをはじめブロックチェーンを利用した新しいソーシャルメディアの今後行方、Steemの通貨システムとそのビジネスモデルがどう機能するのか注目していきたいところです。

 

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Aram Mine

Gaiax技術マネージャ。研究開発チーム「さきがけ」リーダー。新たな事業のシーズ探しを牽引。2015年11月『イーサリアム(Ethereum)』 デベロッパーカンファレンス in ロンドンに参加しブロックチェーンの持つ可能性に魅入られる。以降ブロックチェーン分野について集中的に取り組む。

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