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ガイアックスが運営するコミュニティスペース「Nagatacho GRID」にて開かれた、トークセッションとハンズオン体験(昼の部)に引き続き、夜の部ではDLT Educationの代表であるロバート氏のトークを始めとして、有識者4名によるブロックチェーンの国内外事例に関するトークセッションと、交流会が開かれました。その模様をレポートします。

DLT for Enterprises Ecosystem Overview

DLT Education 代表:Robert Schwentker氏

シリコンバレーからDLT Educationの代表であるRobert Schwentker(ロバート・シュベンカー)氏が来日し、海外のブロックチェーン・DLT(分散型台帳技術)の最新事情を語っていただきました。ロバート氏は、Blockchain Universityの創業者として、シリコンバレーを中心にブロックチェーン技術の教育プログラムの提供や、エンジニアの育成に取り組む一方で、ベンチャー企業・大手企業の支援をして来ました。直近は活動の幅を広げ、DLT Education の代表としてMITメディアラボの暗号通貨コースなどDLTについての教鞭を執っています。

ロバート氏はDLTのエコシステムとして直近の傾向として、Venture Capital(VC)による投資は落ち着きを取り戻してきており、投資額は減ってきていることを挙げました。また、スタートアップは特にエンタープライズ領域に注力しているとも述べており、そのための有力なツールとしてZcashを取り上げており、Zcashの取引追跡ができない完璧なプライバシー保護というメリットが、エンタープライズ領域の分散台帳に活用されると予想しています。

Zcash

その他にも、Blockstreamやcoinbase、Ethereum、Ripple、R3コンソーシアム、Hyperledgerといった直近で目立つブロックチェーンプロジェクトを取り上げており、以下のように意見や予想をまとめていました。

  • ビットコインは、パブリックブロックチェーンとしては未だに優勢である
  • Blockstream社が、今後ビットコインのエンタープライズ領域でのソリューション提供者として優位に活躍するであろう
  • Ethereum Enterprise Allianceが今後、プライベートブロックチェーン型としてエンタープライズ領域のETHをリードしていく
  • Rippleは、Interledgerと呼ばれる支払いネットワークを繋ぐプロトコルに新たに注力している
  • 銀行間コンソーシアムとして最大であるR3が発表したFedcoinや、Hyperledger Fabric 1.0に注目したい

 

ブロックチェーンで切り拓く未来

株式会社ガイアックス:峯荒夢

今回のイベントの主催者であるガイアックスの先行技術開発チーム「さきがけ」のリーダーである峯から、ブロックチェーンの現状や将来性についてお話しました。台帳技術であるブロックチェーンを使って世の中をもっと良くすることをミッションとして掲げ、中間者による搾取や不正アクセスによる改ざんといったものを排除する力がブロックチェーンにはあると考えています。

またガイアックスは、シェアリングエコノミーに注力しています。シェアリングエコノミーは、モノ・スペース・リソース・移動といった様々なサービスを個人間でやり取りすることになりますが、それらのサービスを横断的に管理するプラットフォームとして、ブロックチェーン技術を活用できると考えています。ガイアックスはその活用サービスの一環として、後述する「TRUST DOCK」をローンチしています。

ガイアックスは、日本ブロックチェーン協会(JBA)に理事として参加しており、マネーロンダリングを防ぐといった目的のために施行された通称「仮想通貨法」にも注目をしています。また、ブロックチェーンを多くの人に使ってもらえるように、ブロックチェーンの国際標準化を検討する国内検討委員会にも参加しています。

ブロックチェーンの魅力を伝えるために、記者向けのブリーフィングや講演、雑誌掲載、メディア(Blockchain Biz)活動など多岐に携わっていますが、それだけでは事業として不十分であり、自社プロダクトの開発や様々な企業との協業、実証実験とビジネス化を、さらにスピードアップして取り組んでいく必要があります。

また峯は、ブロックチェーンが相互に接続される未来を予想しています。BitcoinやEthereumといったブロックチェーン同士が繋がり、さらにそこに接続されたアプリケーション同士も有機的に繋がることで、革新的なコラボレーションをが生まれることを期待しています。

 

Hyperledger Project 「いろは」の特徴とユースケースのご紹介

株式会社ソラミツ:宮沢和正氏

また、昼の部のハンズオン体験イベントにて扱ったHyperledger Irohaの開発元であるソラミツ株式会社のCOOの宮沢和正氏より、ソラミツ株式会社の「Hyperledger Iroha」 についてお話いただきました。

ソラミツ株式会社はブロックチェーン技術を有しており、一気通貫でアプリケーションレイヤーのソフトウェアまで開発し、サービス提供を行うことを事業としています。ソフトウェアを支えるプラットフォームとして、ソラミツ社の独自のブロックチェーン技術「Hyperledger Iroha」を有しており、そのHyperledger Irohaの上に、アイデンティティやデジタルアセット・スマートコントラクトといったサービス・アプリケーションを開発し乗せることで、ブロックチェーン業界をリードしようと考えています。

またソラミツ社は、プロジェクトガバナンス機構であるLinux Foundationのオープンソース「Hyperledgerプロジェクト」においてプロジェクトネーム「Hyperledger Iroha」としてコードを提供しています。Hyperledger Irohaは、2016年9月26日にHyperledgerプロジェクトに提案され、2016年10月13日にIncubationとして正式に採択されました。IBM主導のHyperledger Fabric、IntelのHyperledger Sawtooth Lakeに続いて世界で3番目のプロジェクトであり、日本発のブロックチェーンとしてはもちろん初めて、そして2017年4月現時点では唯一の採択となっています。そして、Hyperledger Irohaはオープンソースであるために、無償で自由に利用することができます。十分なセキュリティ評価も可能であり、ブロックチェーンの世界標準基盤となることを目標としています。

Hyperledger Irohaの特徴として、宮沢氏は三点挙げています。まず一点目としては「シンプルで高速」であるので、ファイナリティは2秒以内で、秒間数千件の取引が可能です。また検証ノードが増えても遅くなりません。二点目としては「モバイル対応」をしているのでiOS、Androidを手厚くサポートしています。三点目に「マルチアセット対応」を挙げており、通貨・ポイント・アセット・有価証券などの複数のアセットが同時に処理可能となっています。

ソラミツ社はすでに、国内の複数の金融機関との共同研究やシステムの共同開発も進めています。「Hyperledger Iroha」やHyperledger Fabricのバージョンアップにより、エンタープライズのブロックチェーンでは今後より大きなスケールでの実証実験などが進むことが予想されます。ソラミツ社、「Hyperledger Iroha」については、昼の部の記事でも紹介したのでそちらもご覧下さい。

 

シャアサービス向け本人確認サービス TRUST DOCK

株式会社ガイアックス:菊池梓

最後は、ガイアックスが提供する本人確認サービスである、「TRUST DOCK」について菊池が登壇しました。ガイアックスが注力しているシェアリングエコノミー業界において、まだまだ海外のサービスであるUberやAirbnbが取り上げられることが多いですが、日本においてもシェアリングエコノミーサービスは拡大を続けています。シェアリングエコノミーの特性として、個人がサービス提供を行うためにサービス品質や履行にばらつきがあること、また、個人同士がリアルで会う、しかも自宅などで会う場合もある、ということから、お互いの信頼関係を契約前につくっておく必要があるという特徴があります。

そういった背景をもとに、シェアリングエコノミー業界において本人確認を簡単にできるプラットフォームを作るべく、「TRUST DOCK」というサービスを作りました。

シェアリングサービス向け本人確認サービス|TRUST DOCK

TRUST DOCKでは、シェアサービス及びチェック企業に対して、本人確認のプラットフォームを提供しています。流れとしては、ユーザーがあるシェアサービスを利用するために本人確認を求められると、ユーザーは自分の公的身分証の画像をTRUST DOCKにアップロードします。次に、身分証のチェック企業が身分証をチェックします。チェック企業の本人確認が終わった後、本人確認ができたことをシェアサービス提供社に通知する、というサービスです。

ここにブロックチェーンを入れるとどうなるかと言うと、誰でも見られることによる信頼性や透明性の高いデータベースであるブロックチェーンに、身分証のチェック確認の事実を保存しておくことで、たとえシェアサービス事業者や個人が、ガイアックスやガイアックスが出す情報のことを信用していなくても、誰でも見られるブロックチェーンに書かれている記録を見ることで、「身分証の確認がされたのだな」ということを信用することができるようになります。つまり、従来のIDシステムに比べ信頼性・透明性が高くなるというブロックチェーンのメリットの恩恵を受けることができるのです。

一方で注意しなければならないこととして、菊池氏は以下のような点を挙げています。

  • 企画するときに、従来型のデータベースと何が違うのか、ブロックチェーンに出来ること出来ないことをしっかりと吟味し、「なぜブロックチェーンを選ぶのか」ということを十分に考える必要がある
  • ノード間のコンセンサス形成と、その上にあるアプリ上の個人認証の仕組みを混同されがちなところがあることから、TRUST DOCKは「身分証を確認するという行為」自体は行わず、その内容が改ざんされていないか・署名した本人か、ということのみを確認する、ということをしっかりと理解していただく必要がある
  • ブロックチェーンは追記型のデータベースであるため、使うチェーンによりますが、容量が限られているものが多いので、ブロックチェーンの中に何のデータを入れるのか、ということを選んだブロックチェーンの特性を理解しながら考えていく必要がある

ブロックチェーンと組み合わせることで、多くの人にとってより便利なシェアリングエコノミーサービスを利用することが出来るようになる未来が期待されます。その後の交流会では、ビジネスからエンジニアまでいろいろな方が交流を行い、またブロックチェーンを介して新たなつながりが生まれていったのではないかと思います。

 

ガイアックスが運営するNagatacho GRIDでは、今後もこのようなイベントを企画していきます。イベントを通して、世界の最先端に触れ、新しい世界を切り拓いていきましょう。

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Aram Mine

Gaiax技術マネージャ。研究開発チーム「さきがけ」リーダー。新たな事業のシーズ探しを牽引。2015年11月『イーサリアム(Ethereum)』 デベロッパーカンファレンス in ロンドンに参加しブロックチェーンの持つ可能性に魅入られる。以降ブロックチェーン分野について集中的に取り組む。

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