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  • 更新日: 2020年7月13日

ビットコインという仮想通貨は、中央管理者のいないにもかかわらず、個人間の送金を可能にしたシステムという点で革新的なサービスです。さらに、ビットコインは非常に少額な送金や決済を行うことができるように設計されています。このようなマイクロペイメント(小額決済)をもっと便利にする技術の一つとして「ライトニングネットワーク」というものがあります。今回はライトニングネットワークについて見ていきましょう。

 

マイクロペイメントとは

まずはマイクロペイメントについて簡単に触れておきます。。マイクロペイメント(micropayment)という言葉は、microという単位は1000分の1を指すため、本来は1000分の1ドルの支払いを意味しているのですが、そのような少額単位の支払いを効率的に実現する支払いシステム全般を含めたものの総称として使われています。このような、マイクロペイメントは、ほんの小さな金額でも支払えることから、デジタルコンテンツ視聴や支払い、ネット上でのリワードといった少額の都度課金に利用することが想定されます。

このマイクロペイメントはビットコインでも実現でき、1円以下の小額送金・少額決済を行うことは技術的には可能です。しかし、ビットコインを送金する際にかかるトランザクション手数料がネックになり、現実的には使えない状況にあります。従来の銀行経由の国際送金などに比べたら非常に少ない手数料で済むのですが、近年はビットコインの価格の高騰や、マイニングコストが徐々に上がり、トランザクション手数料が高騰し、マイクロペイメントのような少額の支払いとなると、送金金額に対して相対的に手数料が高くなってしまいます。2017年11月1日現在でトランザクションあたりの手数料は約5ドル程度というデータ(参考:BitInfoCharts)もあります。これでは、マイクロペイメントを行っても、手数料のほうが高く付いてしまい意味をなしません。

加えて、ビットコインはトランザクションの処理速度が高くないため、頻度の高い決済には向いていないという欠点もあります。

 

ペイメントチャンネルとは

ライトニングネットワークを理解するためには、まずペイメントチャンネル及びマイクロペイメントについて知る必要があります。ペイメントチャンネルとは、ビットコインをブロックチェーン外であるオフチェーンにて速く且つ安く送信するためのサイドチェーンをつかった技術です。そのペイメントチャンネルに近い技術としてライトニングネットワークが挙げられます。

ブロックチェーンの側鎖となる概念「サイドチェーン」

しかし、ペイメントチャネルにもいくつかの欠点が存在します。その一つに、送金者・受取人のペアごとにそれぞれペイメントチャネルを開設しなければならないという点があります。チャネルを作るコスト自体は高くありませんが、支払いを行う人が何度もチャンネルを作ることは非常に手間であり、またトランザクション量という点でも、スケーラビリティという点でも問題を抱えることになってしまいます。

 

ライトニングネットワークの概要

ペイメントチャンネルはその対象が個人間で完結するのに対し、ライトニングネットワークはペイメントチャンネルが多くのユーザー間で複雑にネットワーク化された状態を指します。

つまり、上記のようにペイメントチャネルだと1対1のチャンネルしか開設できないという欠点がありますが、これを多対多でペイメントを行えるようにする技術が「ライトニングネットワーク」です。第三者を経由することでペイメントチャネルで繋がっている人であれば、誰にでも送金可能になります。この技術を利用することができれば、ビットコインのスケーラビリティの問題を解決しつつ、マイクロペイメントを実現できるとされています。

このライトニングネットワークはBlockstreamが開発するサイドチェーンにおける技術でもあり、ビットコイン開発者コミュニティー全体で策定と実装が進んでいます。

ブロックチェーンの側鎖となる概念「サイドチェーン」

 

画像:Lightning Network

 

少しだけ具体的な例で見てましょう。まずAliceがBobに支払いチャネルを作成し、Bob→CarolとCarol→Daveも同様にチャネルを作成している場合、AliceからDaveへの支払いはBob及びCarol経由で行うことができるというものです。すなわち中継してくれる人を経由した支払いネットワークを利用することでビットコインを届けることが可能になります。また数satoshiといった超少額の支払いを何回行っても手数料はかからないという点がメリットとなります。

すなわちライトニングネットワークは、ビットコインブロックチェーンを利用しつつも、直接ブロックチェーン上で毎回トランザクションを記録するのではなく、オフチェーンで大量のトランザクションを処理することのできる技術です。

また従来のビットコインネットワークのように信頼を要する必要がなく、中継支払いが可能となります。この原理がHash Timelocked Contract (HTLC)と呼ばれる方法により実現可能とされています。HTLCは、トランザクション内にハッシュを入れておき、最終的な受取人(上記におけるDave)だけがこのキーを知っていることでロックを解除でき、ビットコインを利用できるという方法です。最後の受取人だけがキーを知っている一方で、途中の中継者(BobやCarol)はこのロック解除キーを知らないので、中継していたとしてもビットコインを勝手に持ち逃げすることはできません。

 

画像:Lightning Network

 

ライトニングネットワークのメリット・デメリット

ライトニングネットワークの利点としては、やはりビットコイン送金で享受できるトラストレスな性質を維持できる点でしょう。また大部分のトランザクションが即時かつ格安の送金手数料でできるようになる可能性があるということも大きなメリットです。またマイクロペイメントチャネルと比較すると、様々な人にマイクロペイメントができます。またビットコインの外で、大半の送金の管理を行えるため、ビットコインのスケール問題への解決策の一つになりうる可能性があり、注目を集めています。

一方で、処理が複雑であったり、監視する必要性があるといったデメリットも存在します。またライトニングネットワークでは中継者が必要であり、ネットワークにある程度のお金を常時デポジットしていないといけません。そうすると一定規模のデポジットを行って流動性や相互接続を確保するような中央集権的な管理者が表れてしまう危険性も存在します。

 

ライトニングネットワークが実現すれば、超高頻度取引を少額で行えるようになり、新たなビジネスモデルが生まれてくる可能性も高いでしょう。もし世界中のサービスに低コストで少額支払いができるようになれば、どれほど便利かは想像に容易いかと思います。ライトニングネットワークが実現したした世界が来るのが楽しみですね。

Gaiax技術マネージャ。研究開発チーム「さきがけ」リーダー。新たな事業のシーズ探しを牽引。2015年11月『イーサリアム(Ethereum)』 デベロッパーカンファレンス in ロンドンに参加しブロックチェーンの持つ可能性に魅入られる。以降ブロックチェーン分野について集中的に取り組む。

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