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ビットコインブロックチェーンと独自のブロックチェーンを併用してデータが過去のある時点で存在していたことを証明する分散型の公証プラットフォームFactomについて紹介します。

 

分散型公証プラットフォームFactomとは

Factomはアメリカのテキサス州オースティンに拠点をおくスタートアップで、ブロックチェーンの改ざんが不可能であるという特徴を活かし、文書などのデータが過去のある時点で存在したことを証明する分散型の公証プラットフォームを提供しています。

Factom – Making the World’s Systems Honest

たとえば、土地の権利書を権利が移転する度にFactomに記録することで、いつどのように権利が移転し、現在誰がその土地を保有するのか、改ざんがない形で明らかにできます。また、分散型のシステムとして構築することでデータが失われるリスクも回避できます。

Factomの開発は2014年にはじまり、当初FactomではなくNotary Chain(公証人チェーン)と命名され、ホワイトペーパーが発表されました。翌2015年にはバージョン0.1が公開され、3月から5月にかけて行われたトークンセールには1500人以上が参加し、FactomはトークンFactoidを4,379,973FCT販売し、2278ビットコイン(当時のレートで約50万ドル、6400万円相当)の調達に成功しました。2016年6月にはアメリカ合衆国国土安全保障省の科学・テクノロジー部門からIoTデバイスのIDのセキュリティー向上の目的で助成を受け、同年11月にはビル&メリンダ・ゲイツ財団から分散型の医療記録データベースの開発で助成を受けています。2017年に入ってからは1兆ドル規模の住宅ローン業界をターゲットにしたソリューションFactom Harmonyをリリースしました。2017年4月には大型投資が発表され、Factomはこれまでに954万ドル(2017年10月執筆時点のレートで10億円強)を調達しています。

Factoidはこれまでに8,753,219 FCT供給され、現在新規発行はされていません。Factomによると、Factomのプロトコルが完成し次第プロトコルを実行するサーバーに対して新規発行を開始するといいます。Factomに記録を残したいユーザーはFactoidをEntry Creditと交換して手数料を支払います。

 

ブロックチェーンの使い方

Factomは、Factomに登録されるデータを10分毎にブロックにし、先行するブロックおよび後続のブロックとハッシュ値でリンクし、独自のFactomブロックチェーンを構成しています。

合意形成はRaftと呼ばれる分散合意形成アルゴリズムと似た独自の合意形成アルゴリズムに基づいて行われます。Factomのネットワークには3種類のノードが存在します。

  • Federatedノード:リーダーと呼ばれ、合意形成やFactomへの書き込みを行う
  • Auditorノード: リーダーであり、federatedノードを監視し有事にfederatedノードとおきかわる
  • Followerノード: 書き込みの依頼を受けつけ、federatedノードに送信する

Factomネットワークのノードの役割(画像: Factom UniversityのFactom Network Structure解説動画より)

Federatedノードは自身が稼働していることをfollowerノードに周知するためネットワークにハートビートメッセージを送ります。Federatedノードのハートビートメッセージが送られてこない場合、followerノードはステータスをcandidateに変えて新しくリーダーとなるノードを選びます。

合意形成はfederatedノードによって行われ、多数派のfederatedノードのひとつがランダムに選ばれブロックを生成します。さらにFactomは自身のブロックチェーンにデータを記録するだけでなく、10分毎に生成されるディレクトリーブロックと呼ばれるブロックのマークルツリーのルートをビットコインのブロックチェーンにアンカリングすることで保証をより確実なものにしています。

Factomとビットコインブロックチェーンの関係(画像: Factom UniversityのFactom Network Structure解説動画より)

Factomブロックチェーンのデータ構造や合意形成の詳細については、Factomの普及のために公開されているFactom Universityの資料が参考になります。

Technology – Factom University

 

Factomの実証実験・利用事例

Factomは実際に運用段階に入っているプロジェクトで、これまでに国単位での利用も構想されてきました。たとえば、2015年には中米のホンジュラス政府とのパートナーシップのもと、ブロックチェーンを利用して土地の権利を管理するプロジェクトが報じられました。

Honduras to build land title registry using bitcoin technology | Reuters

このホンジュラス政府とのパートナーシップについてはアップデートがなく構想に終わってしまったという見方もあるようですが、翌2016年2月には中国でのスマートシティー構築に向けたコンサルティングファームiSoftStoneとのパートナーシップが発表されています。FactomはiSoftStoneと中国の80都市にブロックチェーンを利用したソリューションを導入する計画で、行政サービスの透明性を確保しつつ、データの管理や監査のコストを抑える狙いがあるといいます。

iSoftStone and Factom Announce a Partnership to Integrate Blockchain Technology and Smart City Solutions – Factom

アメリカでは、金融データAPIやアプリケーションを販売するIntrinioとともに、アメリカの株式3000銘柄の値動きを15分毎にFactomブロックチェーンに記録しています。このプロジェクトには金融データを一例として、実世界の膨大なデータをFactomブロックチェーンが扱えることを実証する意味もあるようです。

Intrinio + Factom Announce Collaboration – Factom

 

今後の展望

Factomはロードマップを示しておらず、汎用な公証プラットフォームの用途を、助成を受けたプロジェクトやパートナーシップにもとづく実証実験で模索しつつ、プラットフォームのアップデートを続けているようです。一方、2017年4月に住宅ローン業界向けのプラットフォームFactom Harmonyの提供が始まり、Factomがこの分野に可能性を見いだしていることもうかがえます。

以前、本ブログでは公証プラットフォームとしてスペイン発のStamepryを取りあげました。公証プラットフォームは、改ざんが不可能でデータの監査や管理に関わる人手を省き効率化できるといったブロックチェーンの特徴がダイレクトに活きる分野です。Factom、Stamperyといった個々のプラットフォームと合わせて、ブロックチェーンを利用した分散型の公証プラットフォームという分野にも注目したおきたいところです。

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Aram Mine

Gaiax技術マネージャ。研究開発チーム「さきがけ」リーダー。新たな事業のシーズ探しを牽引。2015年11月『イーサリアム(Ethereum)』 デベロッパーカンファレンス in ロンドンに参加しブロックチェーンの持つ可能性に魅入られる。以降ブロックチェーン分野について集中的に取り組む。

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