画像:https://bitcoin.org より
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本連載ではEthereumRippleNEM、Bitcoinといったプラットフォームとそれを支えるブロックチェーンについて紹介します。EthereumRippleNEMに続いて、今回はBitcoinの生い立ち、得意とする分野、通貨とその発行方法、合意形成の方法について解説します。

※ 記事冒頭の画像はbitcoin.orgより

 

ビットコインの生い立ち

2008年11月Satoshi Nakamoto(中本哲史)氏によって、「Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System」というタイトルの論文が発表されました。2009年1月にはビットコインクライアントがオープンソースで公開され、ビットコインが発行され、ビットコインネットワークの運用が始まり、ビットコインは世界初の分散型の電子通貨となりました。その後、Nakamoto氏は、Gavin Andresen氏をBitcoin Coreとして知られるビットコインネットワークのクライアントソフトウェアのリードディベロッパーに指名し、徐々に姿を消していき、2010年にプロジェクトを去ります。

黎明期を経て、ビットコインから着想を得た電子通貨が出現する中、ビットコインは存在感を増していきます。2013年のブロックチェーンの分岐、2014年のマウントゴックスの破綻、各国でのビットコインの法的な扱いの議論を経て、2015年、2016年とビットコインは価格、時価総額をのばしつつ現在に至っています。

ビットコインの歴史についてはWikipedia英語版のページが詳しく、日本語版のページには主要な出来事が箇条書きで整理されています。また、ビットコインの価格とともに国内外のビットコインに関するニュースやビットコインにまつわる出来事がタイムライン上に整理されたBitcoin日本語情報サイトの記事も参考になります。

 

ビットコインが得意とする分野

ビットコインの技術的な強みとして、まず、約8年間無停止で運用されている実績が挙げられます。ビットコインネットワークは2009年1月の運用開始以来、無停止で運用され、ネットワークが稼働してからの取引をブロックチェーンに記録し続けています。この実績から、ビットコインをはじめとするさまざまなプラットフォームとそのブロックチェーンが金融、トレーサビリティー、個人の証明といった分野で官民から注目を集めています。経済産業省はブロックチェーンを解説したページで「ビットコインの技術であるブロックチェーンを、他のサービス分野に応用すると、約70兆円もの市場に影響がある、との試算が出ました」としています。

取引所での取引量が多く流動性が高い点、支払い方法としてはまだ一部地域、一部利用者に限られ、完全に一般的なものとは言えませんが、他の電子通貨と比べて利用機会は多く、エンドユーザーが使うさまざまなウォレットアプリが公開され電子通貨として普及し始めている点もビットコインの強みとして挙げられるでしょう。coinmap.orgでは地図上で全世界のビットコインを利用できる場所一望することができます。

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画像:ビットコインを利用できる場所の分布(coinmap.orgより)

本連載でも紹介してきたEthereum、Ripple、NEMなど他の分散型の電子通貨やそのプラットフォームがスマートコントラクト、銀行間の送金など開発者や特定分野の専門家によるサービス開発を強く意識し、サービスの裏側に隠れがちなのに対し、エンドユーザーにも広く認知されている点もビットコインの特徴と言えそうです。

 

通貨ビットコインとその発行方法

ビットコインの通貨単位はBTC(ビットコイン)と表記されます。ビットコインの発行上限は2100万BTCに定められていて、採掘者(マイナー)と呼ばれるネットワークの参加者が取引を検証・承認(マイニング)し、受け取る報酬として新しくビットコインが発行されます。マイニングの報酬は21万ブロックごとに半減期を迎え、2009年の運用開始時には1ブロックあたり50BTC、2012年11月の半減期以降は25BTC、そして2016年7月の半減期以降12.5BTCとなっています。
※ ビットコインの半減期について詳しくは本ブログの「2回目の半減期を迎える仮想通貨ビットコイン(bitcoin)」をご参照ください。

ビットコインの統計情報を公開しているBlockchain.infoによると、ビットコインネットワークの運用開始から今日までおよそ1600万BTCが発行され、これは発行上限の約76%にあたります(2016年11月現在)。

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画像:ビットコインの総流通量(Blockchin.infoより)

Bitcoin Wikiによると、理想的には10分ごとに1ブロックが生成され、マイニングの手数料は約4年に一度半減期を迎え、2140年10月に最後の半減期を迎えることが予想されています。実際にはブロックの生成スピードが理想より速かった、遅かったといった場合が想定されることから、幅を持たせたビットコインの供給予測が公開されています。

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画像:ビットコインの供給予測(Controlled supply – Bitcoin WikiSupply timeline estimation」より )

ビットコインの通貨発行の仕組みの詳細については、Bitcoin Wikiのビットコインの供給に関するページが参考になります。

Controlled supply – Bitcoin Wiki

 

合意形成の方法

ビットコインのネットワークでは、マイナーと呼ばれるネットワークの参加者によって取引が検証・承認されます。

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画像:ビットコインの取引の検証・承認(動画What is Bitcoin? (v2)より)

ビットコインは取引を検証、承認する合意形成の方法として、Proof of Work(プルーフオブワーク、PoW)というアルゴリズムを採用しています。概要を見てみましょう。マイナーによって検証された取引は、ネットワークにブロードキャストされ、マイナーは取引の集合からブロックの作成を試みます。ひとつ前のブロックのハッシュ値とノンスと呼ばれる32ビットのランダムな値をハッシュ関数に与え、出力がある閾値以下になるまでノンスの調整を繰り返し、もっとも速く正解を出せると、ブロックチェーンに新しくブロックを追加することができます。この問題の難易度は、10分に1ブロックが生成されるよう出力の閾値の大小で調整され(ノンスの冒頭がいくつの0で始まるか)、閾値が小さいほど難易度が高く、閾値が大きいほど難易度が低くなります。

ただし、PoWは完全な合意形成の方法というわけではありません。ノンスの発見は総当たりで行われることから、マイナー同士の競争に勝つにはマシンパワーや多大な電力資源が必要になります。実際どのような規模でマイニングが行われているかデジタルメディアVICEの「Life Inside a Secret Chinese Bitcoin Mine」(中国の秘密のビットコイン鉱山での生活)のトレーラーで見ることができます。

ビットコインのマイニングには大規模なサーバーセンターや専用端末、電力といった資源が必要となり、PoWに代わる合意形成の方法として、Ethereumが将来的に採用予定のProof of Stake(PoS)、RippleのConsensus、NEMのProof of Importance(PoI)といった方法が提案され、効率的かつ公平な合意形成の方法が模索されています。

ビットコインの合意形成については、ビットコインの生みの親Nakamoto氏のオリジナルの論文「Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System」に詳細が記載されています。

 

今後の展望

ビットコインの今後の課題のひとつとして、スケールの問題があります。現在、ビットコインのブロックチェーンのブロックサイズは1MBとされていますが、以前より1MBに達してしまうケースがあり、取引の増加に伴い平均ブロックサイズも1MBに近づこうとしています。1ブロックに記録される取引の数は多くても2000取引強、1ブロックの理想的な生成時間は10分とされていることから、VISAの最大処理能力秒間56,000件と比べると、現状ビットコインのネットワークは実に限られた数の取引しか扱えないことがわかります。

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画像:ビットコインブロックチェーンの平均ブロックサイズ(Blockchain.infoより)

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画像:ビットコインブロックチェーンのブロック当たりの取引数(Blockchain.infoより)

このような状況に対し、ブロックサイズの拡張、ブロックに格納できる取引の数を増やすといった対策が考えられます。ブロックサイズについては、現状の1MBから数MBに拡張しようという提案が出されていますが、まだ支持を得るには至っていません。これに対して、segregated witness(通称segwit)という取引の署名(witness)をその他の取引情報をから分離し、ブロックに格納できる取引の数を増やそうという提案が出され、2016年10月にリリースされたビットコインのソフトウェア バージョン0.13.1から支持を募っています。Bitcoin Coreはバージョン0.13.1のリリースドキュメントの中で、segwitにより最大現状の70%増で取引を処理できるようになるとしています。

また、外部での動きとして、Blockstream社は同社のLightning Networkで、ビットコインのネットワーク上にLightning Networkの参加者のセキュアなマイクロペイメントチャネルのネットワークを構築し、この上で大量かつ高速のビットコインのマイクロペイメントを可能にしようとしています。Lightning Networkの詳細について書かれた論文「The Bitcoin Lightning Network: Scalable Off-Chain Instant Payments」では、VISAの処理量とスピードについて言及し、ターゲットとして意識していることがうかがえます。Blockstream社は2016年10月に最初のテストの結果を「Lightning First Strike: Christian Bought a Cat」というタイトルのブログ記事として公開しています。

このような動きがある中、今後どのようにビットコインのスケールの問題が解決されるか注目していきたいところです。

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Aram Mine

Gaiax技術マネージャ。研究開発チーム「さきがけ」リーダー。新たな事業のシーズ探しを牽引。2015年11月『イーサリアム(Ethereum)』 デベロッパーカンファレンス in ロンドンに参加しブロックチェーンの持つ可能性に魅入られる。以降ブロックチェーン分野について集中的に取り組む。

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