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  • 更新日: 2020年7月1日

ブロックチェーンへの書き込みが待機中となっている取引を承認させるときには、マイニングという処理がおこなわれます。この行為によりトランザクションの改ざんが防がれています。

ブロックチェーンの健全性を支えるマイニング

しかし、このマイニングの計算能力が過半数の悪意あるグループにより支配されてしまう可能性が存在します。この状態を「51%問題(または51%攻撃)」と呼びます。今回は51%問題とは何かを見ていきましょう。

 

51%問題の概要

51%問題とは、悪意あるマイナーによってネットワーク全体の計算能力の過半数(50%以上)が支配されることを表します。この問題によって、ブロックチェーンネットワークにおいても二重支払いなどの不正な取引が行われてしまう可能性があります。

なぜこのようなことが起きてしまうのでしょうか。例としてビットコインを考えます。ビットコインにおいてはブロックの承認にプルーフ・オブ・ワーク(以下「PoW」)という合意形成アルゴリズムが用いられています。

分散ネットワークでの合意を可能にしたコンセンサスアルゴリズム「プルーフ・オブ・ワーク」

PoWでは、トランザクションの確認作業を膨大な計算量を要する問題に置き換えることにより、簡単にトランザクションを改ざんできない形にしました。この作業はCPUの計算量に比例して成功する確率が上がる仕組みになっています。従って、PoWにおいては計算能力の高いマイナーになるほどブロックを生成できる確率が高くなるので、もし特定のグループが高い計算能力を支配的に持つことができると、そのグループは事実上ビットコインネットワークをコントロールできるようになってしまいます。

 

マイニングプール

近年、マイニングの計算能力は加速度的に上がっており、個人レベルでのマイニングはほぼ不可能と言われています。その理由として、多くのマイナーは計算専用のハードウェアであるASIC(Application Specific Integrated Circuit)などを用いてマイニングを行っているためです。さらにASICをもつ個々のマイナーも、プールと呼ばれる複数のマイナーで協力して行うマイニンググループに参加することで報酬を得ることができているのが現状です。これはマイニングが中央化されてしまっているとも言えます。

このようにマイナー達が特定のグループに集まり、現在の各マイニングプールの計算能力は以下のようになっています。

画像:Hashrate配布|Blockchain.info

 

2017年4月現時点では、AntPoolと呼ばれるプールが約15%の計算能力を支配しています。またマイニングプール自体もマイナーに何かを強制させることはできません。従って特に問題はなさそうです。

しかし、2位以下のF2Poolなど合わせて5つのプールを合わせると50%を超えることがわかるかと思います。もし彼ら5つのマイニングプール(及びそのプールに属しているマイナー)が協力をすれば、51%攻撃を行うことが可能になります。

GHash.io

実際に2013年12月には、GHash.ioというビットコインのマイニングプールの計算能力が50%を超えそうになり、またそれによってビットコインの価格も下がり、51%問題が大きな話題となりました。将来的に同様の事件が起こっても不思議ではありません。

画像:GHash.io

またビットコイン以外の参加者が少ない仮想通貨では全体の計算能力が小さいため、より51%問題の危険性が高いということも言えます。

 

51%問題による影響

それではブロックチェーンはマイニングの寡占化によって崩壊していくのでしょうか。考えなければいけないのは、この51%問題によって引き起こされることと、そうでないことを区別することです。

51%問題によって、悪意あるグループが攻撃できることとしては以下のような点が挙げられます。

  • これから行う取引の二重支払い
  • ある取引が承認されるのを妨害する
  • マイニングを独占する(ブロック報酬を全て手に入れる)

一方で、以下のようなことは事実上できません。

  • 過去の取引データを改ざんする
  • 他人のビットコイン(を始めとした仮想通貨)を奪い取る

過去のデータを書き換えることができないという点はブロックチェーン技術においては大きな利点です。そのようなことを理論上ではできてしまいます。しかし、51%の計算能力に加えて過去のブロック生成に使われたパワーをも必要とするので、現実的には無理だと考えられています。

つまり、51%問題が発生したとしても、過去の履歴が改ざんされることはありません。また勝手に自分のウォレットからコインがなくなったりはしないので、ブロックチェーンにおける利点の多くは守られます。

また仮に51%問題が起きたとしても、プロトコル自体に変更を加えることで回避することもできます。さらに、51%問題が起こることによってそのブロックチェーンの価値が下がれば攻撃者にとっても良いことはないので、インセンティブという点においてもわざわざ高いコストを支払って攻撃は行わないであろうと考えられています。

 

もちろん51%問題が脅威的な問題であることに変わりはなく、このようなブロックチェーン上の問題点は常に議論に上げられています。今後も議論され、時には仕様に変更が加えられていくかもしれません。注目して見ていきましょう。

Gaiax技術マネージャ。研究開発チーム「さきがけ」リーダー。新たな事業のシーズ探しを牽引。2015年11月『イーサリアム(Ethereum)』 デベロッパーカンファレンス in ロンドンに参加しブロックチェーンの持つ可能性に魅入られる。以降ブロックチェーン分野について集中的に取り組む。

51%問題ビットコインブロックチェーン用語集

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